分離膜コラム
微細藻類の膜濃縮について
微細藻類とは
微細藻類(びさいそうるい)とは、非常に小さな藻類の総称で、通常は肉眼では見えないサイズ(1µmから数百µm程度)を持つ植物性の生物です。
微細藻類は主に水中に生息し、淡水や海水の環境で広く分布しています。
微細藻類は光合成を行い、二酸化炭素と水から有機物を合成し、酸素を放出します。
このため、地球の生態系において非常に重要な役割を果たしており、食物連鎖の基盤を形成しています。
また、微細藻類は水中の栄養素を吸収し、環境の浄化にも寄与します。
近年、微細藻類はバイオ燃料や食品、化粧品、医薬品などの原料としても注目されており、持続可能な資源としての利用が期待されています。
微細藻類の種類と用途・生産工程について
産業的に利用できる代表的な微細藻類として、ナンノクロロプシス・クロレラ、スピルリナ、ユーグレナ、珪藻が挙げられます。
これらは産業用途として様々な用途で使用されています。
微細藻類の産業用途での利用では主に魚の餌料用途と食品原料用途に分けられます。
それぞれの生産工程は下図のようになります。

藻類の生産には大量培養が必須となっており、屋外でのオープンボンド型や閉鎖型のフォトバイオリアクターが利用されています。
オープンボンド型は大量生産が簡易にできますが、コンタミ等のリスクがあります。
フォトバイオリアクターは培養工程の管理が容易で高品質な藻類の生産が可能ですが、コストが高くなります。
また、藻類の産業用途に利用するには藻類の回収が重要であり、濃縮工程のコスト削減・効率化が必要であると言われています。
濃縮工程では主に遠心分離や膜が使用されています。
弊社では中空糸型UF膜モジュールを使用して微細藻類の濃縮に取り組んでいます。
中空糸型UF膜での微細藻類の濃縮について
中空糸型UF膜モジュールを用いた濃縮のメリット・デメリットは下記のようになります。

中空糸型UF膜モジュールでの濃縮の機構を下図に示します。
弊社中空糸膜モジュールは内圧型を採用しており、中空糸の内側に藻類を流します。
膜の孔径によるふるい分けで培養液と藻類を分離するため、安定した品質での濃縮ができます。
中空糸膜の孔径は0.01µm程度であり、藻類の大きさは数µm~100µm程度なので、藻類はろ過されることはないため様々な種類の藻類を濃縮することが可能です。

膜材質による藻類への適用について
藻類の濃縮に用いる中空糸膜の材質は2種類使用しております。
親水性を特徴とする酢酸セルロース(CA)と高い耐薬品性を持つポリエーテルサルホン(PES)の2種類です。
CA膜は水処理で豊富な実績を持っており、親水性が高いため透水性能の低下が少なく、大量の処理に適しています。
PES膜は初期のろ過速度が高い特徴、耐薬品性が高い特徴から少量の処理や培養液のpHが高い/低い場合に適しています。
膜を用いた濃縮装置について
装置の自働化
中空糸型UF膜モジュールでの濃縮は装置を自動化することが可能であり、生産工程での省人化にも貢献できます。
膜の使用の際に必要となってくる洗浄についても自動化することが可能であり、藻類の濃縮から回収、洗浄まで自動制御での運転が可能です。
海水に対応
微細藻類の培養を海水で行う場合も、装置の仕様を海水仕様にすることで膜での濃縮が可能です。
弊社設計の装置は海水での使用実績も豊富にあります。