分離膜コラム
医薬・食品分野で使用される限外ろ過フィルターとは?
医薬・食品分野では高度な分離・除菌・品質保持が不可欠です。
医薬・食品分野における限外ろ過(UF)法の適用について紹介します。
限外ろ過(UF)とは? 医薬・食品分野で注目される理由
・限外ろ過法とは
限外ろ過(UF)とは膜分離技術の一種であり、孔径によるふるい分けの原理を利用しています。
医薬・食品分野で処理対象物質となるタンパク質、ウイルス、菌体、微粒子を分離することが可能です。
膜分離技術には、精密ろ過から逆浸透まで様々な方式があり、処理対象物質のサイズに応じて適切な方式を選択することで、最適な分離が可能となります。
・医薬・食品分野で求められる分離性能
医薬・食品分野で膜に求められる分離性能は、「安全性・品質保証・再現性」を軸に、一般工業用途よりも厳しい条件が求められます。
○高選択制(シャープな分離)
有効成分は通し、不要物(不純物・微生物)は確実に除去することが必要です。
○高除去率
医薬向けではウイルス除去LRV(Log Reducation Value)※ ≧4~6が求められ、食品向けでは菌体、微生物・酵母・カビの確実な除去が求められます。
※LRVとはLog Reduction Value:対数低減値、対数除去値であり、ウイルスや細菌などの微生物が処理によってどの程度除去・不活化されたかを表す指標です。
○透過性能の安定性
透過流束(フラックス)が安定しており、長時間運転でも性能低下が少なく、ファウリング後も洗浄で回復可能であることが必要です。
医薬分野で特に重視される分離性能
○ウイルス除去性能(ウイルスバリア)
タンパク質を透過しつつ、ウイルスのみを除去すること
○タンパク質回収率の高さ
有効成分の吸着が少なく、変性・凝集を起こさないこと
○完全性試験
使用前後で膜欠陥がないこと、除去性能を担保するためのバブルポイント、ディフュージョン試験等が適用可能なこと
医薬用途についての詳細は下記リンクにあります。
医薬・酵素たんぱく市場ソリューションページ
食品分野で特に重視される分離性能
○風味・栄養成分の保持
アミノ酸、糖、香気成分の過剰除去を避け、「濃縮」や「精製」を目的に応じて制御すること
○微生物除去と品質保持の両立
加熱殺菌を行わずに安全性確保、色・香り・食感を変えないこと
○高処理量・コスト効率
大流量処理に耐える、安定運転が可能なこと
食品用途についての詳細は下記リンクにあります。
食品・飲料市場ソリューションページ
限外ろ過法により、安全な分離を実現する仕組みと膜モジュールに求められる性能
膜分離技術は、化学薬品を使用せず、物理的な分離原理によって目的成分と不要物を分けるため、製品への化学的影響がない安全な分離方法です。また、加熱を必要としない低温処理が可能であり、熱に弱いタンパク質や有効成分、風味成分の変性や劣化を抑えることができます。
膜の孔径や分子量カットオフを適切に選定することで、有用成分を保持したまま、不要な異物や微粒子、微生物を効率的に除去することが可能です。
その結果、製品本来の品質や機能を損なうことなく、衛生性と安全性を向上させることができます。
膜モジュールは、膜分離性能を実製造プロセスで安定的に発揮するための構成要素であり、医薬・食品用途では特に安全性、衛生性が重視されます。
・安全性及び衛生性
使用される材料および構造は、食品衛生法、GMP、FDA、EU規制などの関連法規に適合している必要があります。使用中に有害物質が溶出しないことが求められ、特に医薬用途では無毒性、非発熱性、生体適合性などの厳格な安全性要件を満たす必要があります。
・洗浄、滅菌耐性
膜モジュールは、酸・アルカリ・界面活性剤などを用いたCIP洗浄(定置洗浄)に対応できることに加え、121~135℃の蒸気によるSIP滅菌に対する十分な耐久性を有している必要があります。また、エタノールや次亜塩素酸など、現場で使用される各種薬剤に対する耐性も重要です。
・サニタリー性
膜モジュールは、デッドスペースや滞留部が極力少なく、微生物の増殖や汚れ残りが発生しにくいサニタリー設計である必要があります。
弊社中空糸膜は医薬・食品用途での使用も可能です。
中空糸型分離膜モジュール
限外ろ過装置の仕組みとシステム構成
限外ろ過装置は、原液を供給する送液系、分離を行う膜モジュール本体、透過液と濃縮液を回収する配管系から構成されます。
原液はポンプにより膜モジュールへ送られ、圧力を駆動力として膜分離が行われます。
膜を透過した液は透過液として回収され、膜に保持された成分を含む液は濃縮液として排出されます。
医薬・食品分野向けの膜モジュール装置は、製品の安全性・品質・再現性を確保するため、一般工業用途とは異なる設計思想が求められます。
・洗浄、滅菌耐性
膜モジュール装置は、酸・アルカリ・界面活性剤を用いたCIP(定置洗浄)や、121~135℃の蒸気によるSIP(定置滅菌)に耐えられる構造と材質を有していなければなりません。加えて、エタノールや次亜塩素酸など、現場で使用される各種薬剤に対する耐性も重要です。
・サニタリー設計
膜モジュール装置は、デッドスペースや液溜まりが極力排除したサニタリー設計であることが重要です。内面を平滑にし、洗浄液および滅菌蒸気が装置内の接液部全体に均一に行き渡ることで、装置の分解を伴わずにCIP・SIPを実施し、要求される衛生状態を維持できる構造が求められます。
医薬分野における限外ろ過の主な用途
・ワクチン・抗体の濃縮
・タンパク質精製
・ウイルス除去
・注射用水の処理
食品分野における限外ろ過の主な用途
・タンパク質・機能性成分の濃縮
・飲料・液状食品の清澄化
・微生物・異物の除去
限外ろ過法が選ばれる理由|他のろ過技術との違い
加熱殺菌との比較
加熱殺菌は、温度を上げることで微生物を失活させる確実な方法である一方、熱に弱い成分の変性や分解を引き起こす可能性があります。特に、タンパク質、酵素、風味成分、機能性成分を含む医薬品や食品では、品質低下が課題となります。
これに対し、限外ろ過法は加熱を伴わない分離プロセスであり、膜の孔径や分画分子量に基づく物理的な分離によって微粒子や微生物を除去します。そのため、有効成分や風味を保持しながら微生物負荷を低減し、製品の安全性向上に寄与することが可能です。また、連続処理が可能であり、エネルギー消費が比較的少ない点も特長です。ただし、限外ろ過は微生物を「除去」する方法であり、失活させる加熱殺菌とは原理が異なるため、製品特性や要求品質に応じて両者を併用することもあります。
化学処理との比較
化学処理は、薬剤を添加して微生物の殺菌や不純物の除去を行う方法であり、高い処理効果が期待できる一方で、薬剤残留や製品成分への影響が課題となる場合があります。また、処理後には薬剤の除去工程が必要となることがあり、プロセスが複雑化する場合があります。
一方、限外ろ過法は化学薬品を使用しない物理的分離法であるため、薬剤由来の残留リスクを回避できます。さらに、工程の自動化や管理がしやすく、適切な運転条件のもとで高い再現性を確保出来ることから、医薬・食品分野で求められる安全性および品質の確保に適しています。また、薬剤使用量を削減できるため環境負荷が比較的低く、排水処理の負担軽減にも寄与します。
限外ろ過法のコスト
限外ろ過法のコストは、初期導入コストと運転コストを考える必要があります。初期導入コストとしては、膜モジュール、ポンプ、配管、制御機器などの装置費用が必要となります。
一方で、加熱滅菌設備や大規模な薬品注入設備を必要としない場合が多く、プロセス全体を比較的シンプルな構成にできます。運転コストは主に、送液に要する電力、膜モジュールの交換費用、および洗浄(CIP)で使用する水や洗浄剤の費用によって構成されます。限外ろ過は比較的低圧で運転できるためエネルギー消費が小さく、加熱殺菌と比較してランニングコストを抑えやすいです。一方で、原液の性状によっては膜のファウリングが発生し、透過流束の低下や洗浄頻度の増加を招くことがあります。その結果、膜寿命の短縮や運転コストの増加につながる可能性があるため、原液特性や運転条件を考慮した適切な管理は重要です。
限外ろ過法は、一定の初期投資を必要とするものの、低エネルギー且つ非化学的な分離プロセスによる安定した運転が可能であり、品質保持や安全性が重視される医薬・食品分野において、コストパフォーマンスに優れた分離技術と考えられます。また、加熱や化学薬品を用いず、有用成分を保持しながら微粒子や微生物を除去できる点に特長があります。
一方で、限外ろ過法は膜、モジュール・装置構成、分離原理が一体となって機能する技術であり、十分な処理性能と安定した運転を実現するためには、適切な設計と運転・保守管理が不可欠です。
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